婚約指輪に選ばれるダイヤモンドが、いま世界規模で大きく変わりつつあります。2025年、米国の婚約指輪市場において人工のダイヤモンドであるラボグロウンダイヤモンドが占めるシェアは、47.7%に到達しました。
わずか6年前の2019年時点では、その割合は6.3%でした。この6年間のうちに、世界最大の婚約指輪市場を持つ米国での半数が、天然ダイヤモンドからラボグロウンダイヤモンドへと置き換わったことになります。
米国で進行している市場の変化を、GIA資格を持つスタッフの視点も交えて解説します。
1. 米国市場における劇的な変化|6.3%から47.7%へ
まずは米国の保険・市場調査会社BriteCoが2025年に公表した米国婚約指輪市場調査の結果をご覧ください。
| 年 | 米国婚約指輪市場における ラボグロウンのシェア |
|---|---|
| 2019年 | 6.3% |
| 2022年 | 17% |
| 2024年 | 45% |
| 2025年 | 47.7% |

わずか5〜6年で、婚約指輪市場におけるラボグロウンダイヤモンドのシェアは大きく拡大していることがわかります。
ラボグロウンダイヤモンドが単なる「選択肢の一つ」として認知されているレベルではなく、天然ダイヤモンドとおおよそ対等な選択肢になっているといえるでしょう。
業界アナリストの間では、2026年中にはこの数字が50%を超え、ラボグロウンが天然を逆転するシナリオが現実味を帯びていると分析されています。
2. なぜ米国の消費者はラボグロウンを選ぶのか|3つの構造的理由
このシェア急拡大は3つの構造的要因があるとされています。
理由1:圧倒的な値段差
まず最大の要因は、天然ダイヤモンドとの価格差の拡大です。
2025年時点で、米国市場における1カラットの天然ダイヤモンドの平均小売価格は約4,200ドル(約63万円)、品質によっては6,000ドル(約90万円)以上であるのに対し、同等品質のラボグロウンダイヤモンドの平均価格は約1,000ドル(約15万円)前後まで下落しています。
天然とラボグロウンの価格差は2019年時点では25%と小さなものでしたが、2025年にはなんと70%超まで拡大しています。
製造技術(CVD法・HPHT法)の確立による生産の効率化と、製造国の中心である中国・インドでの生産設備の急拡大が、ラボグロウンの価格を継続的に押し下げ続けています。
※価格についてはあくまで米国小売市場でのデータです。日本とは需要と供給が異なるため、天然・ラボグロウンともに上記の価格になるわけではない点にご留意ください。
理由2:「同一のダイヤモンド」であるという認知の浸透
ラボグロウンダイヤモンドは、模造品でもイミテーションでもなく、化学組成・結晶構造・光学特性のすべてが天然ダイヤモンドと変わらない「本物のダイヤモンド」です。
専門の鑑定機関による検査によってのみ区別できるレベルであり、肉眼で見分けることは不可能です。弊社のGIA資格を持つスタッフも、同グレードのダイヤモンドについて、天然とラボグロウンを肉眼で見極めることはまず難しいと断言しています。
この事実が広く浸透したことが、米国消費者の購買判断における心理的なハードルを取り払ったと考えられます。
これまでモアサナイトやキュービックジルコニアなど、さまざまなダイヤモンドのイミテーションストーンが存在し、天然ダイヤモンドの市場を脅かすといわれていました。
それでも実際には天然ダイヤモンドの市場を取り崩すことはできませんでした。その中でラボグロウンが天然と同じくらい選ばれているという事実は、これまでと明らかに違うトレンドといえるでしょう。
理由3:金(ゴールド)価格の高騰による予算配分の変化
ラボグロウンダイヤモンドの取引価格が下がった一方で、2020年から2025年にかけて金の国際価格は約90.6%上昇しています。
これにより指輪自体の地金(土台)部分が大幅に値上がりしています。予算に限りがある消費者は、センターストーンを天然からラボグロウンに切り替えることで、最終的な購入価格のバランスをとっている形です。
日本とは異なり、アメリカではプラチナのニーズが少なく、K18やK14が主流です。そのため金価格が上昇し始めたころから、小売価格に大きな影響が出ていました。
3. 「より大きく、より美しく」|消費者行動の根本的変化
ラボグロウンの普及は、単に「同じ婚約指輪を安く買う」というシンプルな話ではありません。米国の消費者は、価格差によって生まれた予算を、より大きく、より個性的で、より高品質なダイヤモンドに割いているようです。
米BriteCoが出しているデータによると、米国の消費者行動が大きく変わっていることがわかります。
- センターストーンの平均サイズ:2019年の1.31カラットから、2025年には2.45カラットへと約87%大型化
- クラリティ(透明度):VVS1といった最高水準を選ぶ消費者が急増
- カット形状:ラウンドブリリアントカットのシェアが低下し、より表面積が大きく見えるオーバルカットなどファンシーシェイプが人気を獲得

ラボグロウンを選ぶ消費者は「妥協」ではなく、「より好きなデザイン」を選んでいるとも言えます。天然ダイヤモンドでラウンドカットの2.0ct以上、VVS1以上のグレードを選ぶ場合、小売価格は非常に高額になります。
また2.0ctを超える美しいシェイプでVVS1を超える天然オーバルカットは希少性が高く、「そもそもどこの国にそのダイヤモンドがあるのか」「あったとして手に入るのか」というレベル感になってきます。
私たちは天然ダイヤモンドの卸も行っているため、こうした問い合わせをいただくことがあります。つい最近も、このグレードのオーバルカットの天然ダイヤモンドを探すために世界中のダイヤモンドディーラーと話し、ようやく見つかったというレベルでした。
一方で、ラボグロウンであれば人の手で作り出すことができるため、サイズ・品質・デザインの選択肢を広げやすいという特徴があります。
これまで手に入りにくかったサイズ・品質・デザインとしても大きな負担なく購入できる。この合理性こそが、米国の婚約指輪市場を動かしたとも考えられます。
4. 日本市場への示唆|数年遅れで訪れる変化
米国で起きていることは、過去のラグジュアリー市場の歴史を見ても、数年のタイムラグを経て日本市場にも普及する可能性が高いと考えられます。
日本におけるラボグロウンは、婚約指輪のみならずジュエリー市場全体で、米国に比べてまだまだ低水準にあります。しかし、以下のような兆候はすでに観測できています。
- 大手ジュエリーブランドやインフルエンサーによるラボグロウンの取扱の開始
- Z世代・ミレニアル世代を中心としたESG(環境・社会)意識の高まり
- 円安と物価高により「新しい選択肢」を探す流れ
これらは米国市場で2019年〜2022年頃に観察された初期の動向と似ており、日本市場にでも、ラボグロウンの選択肢を真剣に検討する消費者層が今後さらに拡大していくと予測されます。特に婚約指輪はまだしも、普段使いのジュエリーでは一層顕著になっていく可能性が高いです。
特にラボグロウンダイヤモンドの相場自体は、「もうこれ以上下がるのか」という水準感に来ています。一方で、地金となる金やプラチナについては下がる未来が見えにくく、ジュエリー自体の価格は横ばい、あるいは上がり続ける可能性があります。
5. まとめ|ラボグロウンという新しい選択肢
2025年時点で、米国婚約指輪市場の47.7%がラボグロウンダイヤモンドへと置き換わったという事実は、宝石業界における歴史的な転換点とえいます。
価格、品質、価値観。あらゆる側面から消費者の選択が再構築され、ラボグロウンは天然に代わる別のダイヤモンドという新たな主流として確立されつつあります。
nos jewelryは、株式会社Lucy(東京・御徒町の宝飾OEMメーカー)が運営しています。ECサイトのnos jewelryではラボグロウンダイヤモンドを中心に取り扱っていますが、天然ダイヤモンドやカラーストーンで作ったジュエリーを中心に、工場・百貨店・小売店などにOEM/卸売を行っています。
お客様に納得いただいた上で、ジュエリーを選んでいただくお手伝いをしています。
nos jewelryでは、ラボグロウンダイヤモンドを使用した婚約指輪・ジュエリーをご相談いただけます。天然ダイヤモンドでもご注文可能ですので、ご予算に合わせた選び方もご案内しています。
※本記事のデータは、BriteCo「2025 Engagement Ring Market Study」、米国地質調査所(USGS)2025年報告、キンバリー・プロセス公式統計、業界アナリストのレポート等を基に作成しています。市場データは執筆時点(2026年5月)のものです。
よくある質問
Q. ラボグロウンダイヤモンドは本物のダイヤモンドですか?
A. はい。ラボグロウンダイヤモンドは、化学組成・結晶構造・光学特性が天然ダイヤモンドと同じ本物のダイヤモンドです。模造石やイミテーションではありません。
Q. 婚約指輪にラボグロウンダイヤモンドを選ぶのはありですか?
A. 価格を抑えながら大きさや品質にこだわりたい方にとって、一つの選択肢になると考えます。米国では婚約指輪市場の約半数に迫るほど広がっています。
Q. 天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドは見分けられますか?
A. 肉眼で見分けることはほぼ不可能です。専門機関の検査や鑑定によって、天然かラボグロウンかを判別します。
Q. ラボグロウンダイヤモンドのデメリットは何ですか?
A. 天然ダイヤモンドと比べて希少性や再販価値の面では異なる評価になります。将来的な資産価値を重視する場合は、天然ダイヤモンドとの違いを理解して選ぶことが大切です。
Q. 日本でもラボグロウンダイヤモンドは普及しますか?
A. 米国市場の動きから見ると、日本でも数年遅れで選択肢として広がる可能性があります。価格、品質、価値観の変化が普及の後押しになると考えられます。
